2017/02/19

エフェクターのカップリングとその他コンデンサの選び方


先週、電源部のコンデンサの選び方についてこちらでとやこや言いました。

今回は主にカップリングコンデンサ、

その他のトーン回路等のコンデンサの選び方についてとやこや言いたいと思います。

カップリングコンデンサというのは、

信号に直列で入っているいわば、めっちゃ音に影響するであろうコンデンサです。

どこどこのメーカーのコンデンサの音がいいとか言い出すと主観になるので、

今回はtanδと、コンデンサの歪みという観点から考えてみたいと思います。



tanδの話


tanδはタンジェントデルタと読みます。

誘電正接とも言われます。

これは、コンデンサの性能を決めるいろんな要素をまとめて、

一つの総合的な指標にしたようなものです。

コンデンサの総合的な性能を測るのに非常に便利な指標です。

tanδが小さいほど、損失のないコンデンサ。

すなわち理想コンデンサに近づきます。

トーン回路とかを考えるとき計算しますが、

基本的に理想コンデンサとして計算してます。

なのでtanδが小さいほど計算通りになる可能性が高まるというわけです。

また、いわゆる原音忠実ってやつですね。

原音忠実性はオーディオでは人気みたいですが、

かならずしもエフェクターでは原音のままである必要はないので、

必ずしもtanδが良いコンデンサが、良いエフェクターを生み出すわけではありません。

フィルムコンデンサのtanδ

下で、電解コンデンサのtanδが出てきますが、

それの参考になるようにまずフィルムコンデンサのtanδの実測値を示したいと思います。

WIMAのMKS2 0.1uFをLCRメーターを使って実測したところ、

120Hzで、0.001

1kHzで、0.003

10kHzで、0.008

100kHzで、0.021

というような感じでした。

ちなみに1個10円のものから200円ぐらいの他のポリエステルフィルムコンデンサで、

同じ値のものを試してみても、ほぼ同じでした。

アキシャルタイプのマロリ150'sは100kHzで他よりも少しだけ良かったです。

他より耐圧が高いからだと思います。

ただ、ここは可聴域外なので正直気にしないでいいと思います。

ポリプロピレンフィルムだともっといい結果になると思います。

手持ちになかったので測れませんでした。すまぬ。

基本的にはメーカよりも、何のフィルムを使っているかの方が影響すると思います。

電解コンデンサ、OS-CONのtanδ

電解コンデンサは、カップリングコンデンサにあまり適さないとよくいわれます。

オーディオ的な考えと、あと漏れ電流どうのこうのというやつですが、

基本的には、カップリングコンデンサで音色をいじりたくないので、

フィルムを使おうっていうのが多いと思います。

結局のところ高域に影響するので、抜けが悪くなるかもなーという不安から、

なんやかんやで、僕も基本カップリングコンデンサには、フィルムしか使いません。

さて実測値ですが、

ニチコンのMUSE BPシリーズの10uF /25V

120Hz 0.088

1kHz 0.171

10kHz 1.120

100kHz 5.31

OS-CON 10uF / 25V

120Hz 0.010

1kHz 0.012

10kHz 0.023

100kHz 0.235

容量が違うので、さっきのフィルムとなかなか比較し辛いところではありますが、

電解コンデンサは周波数が高くなるにつれてかなりtanδが大きくなっていきます。

すなわち高域が減衰しやすいというわけです。

OS-CONは結構奮闘してますね。

この調子だとカップリングにOS-CONを使いたくなりますが、

そもそも、OS-CONは漏れ電流が大きいので、

カップリングに使うなとメーカーが言ってます。

電解コンもフィルムなんかに比べると漏れ電流が大きいです。

ただ、アンプにあるカップリングコンデンサが直流をカットするので、

そんなに気にしないでもいいかもしれませんが、

高域特性を考えるならフィルム使った方が無難です。

最後の方の10uFのカップリングコンデンサは基本的に1uFのフィルムで代用が効きます。

なのでわざわざOS-CONを使う必要もないかと。

エフェクターではあんまり見ませんが、電解にフィルムをパラってもいいと思います。

あえて電解をカップリングコンデンサに使って高域を抑え気味にすれば、

味付けにもなりますが、個人的にはトーン回路でその辺はいじりたいかなーと思います。

積セラのtanδ

カップリング用と考えて1uFの積セラを実測しました。

120Hz 0.028

1kHz 0.032

10kHz 0.018

100kHz 0.029

となりました。

どうして、10kHzでまた小さくなったのか調査中ですが、

まあまあ良い結果になりました。

参考程度に近い値の2.2uFの電解コンデンサ(MUSE BP)は

120Hz 0.061

1kHz 0.071

10kHz 0.227

100kHz 1.666

というような感じで、比べるとずいぶん積セラの方がいいです。

1uFの電解が手元になかったので、2.2uFの比較ですので参考までに。

エフェクター的にはカップリングにセラミックを使うのも全然ありです。

tanδまとめ

やっぱりなんやかんやで、フィルムが使いやすいと思います。

tanδみても高域まで特性がいいですし。

いわゆる原音忠実性を求めるのであれば、

ポリプロピレンフィルムコンデンサがいいと思います。

ポリエステルフィルムよりもtanδが優れてますので。

一応ですが、あくまでもtanδは総合的な判断ですので、

細かな特性の違いは、それぞれのコンデンサであると思います。

なので、tanδだけを見てコンデンサを選べばいいという話ではありません。

ただし、性能比較の重要な値であることは間違いないので、

第一次審査的な?感じで使うのがいいかもしれませんね。

とはいえ、コンデンサを種類で選ぶことは、

結局tanδの違いで選んでることになりますし、

エフェクターの信号用途では、

コンデンサのメーカー等によるtanδの細かな違いは、

あんまり気にする必要もないかと思います。

高域でのtanδを小さくしたいのであれば、

容量の小さいコンデンサをパラった方が安くつくでしょう。

まあ自作にあたっては、いろんなコンデンサを試すのがまた楽しかったりするので、

予算との相談ですね。

アンプのようなエフェクター。これ一つで完結しそう(笑)
アンプのようなエフェクター。これ一つで完結しそう(笑)

コンデンサの歪み


tanδは非常にわかりやすい指標なのですが、

tanδだけでは歪みについてよくわかりません。

実はセラミックコンデンサ(積セラ含む)は、かかる電圧によって静電容量が変わるものがあります。

積セラの中で、一部(CH、COG等)変わらないものもありますが、

普段使ってる積セラだと変わるものがほとんどだと思います。

交流は常に変動する電圧ですので、

信号電圧で積セラの両端間電圧が変動すれば、

静電容量がかわりますので波形が歪みます。



この動画は極端な例です。

とはいえ、エフェクターのカップリングコンデンサって

LPFのカットオフ周波数がかなり低くなるように値を設定してますよね。

ということはギターの信号は、

カップリングコンデンサと横の抵抗のLPFでは特に減衰しません。

つまり、カップリングコンデンサの両端間で、交流的な電位差はほぼありません。

というわけでギターの信号は、カップリングコンデンサでは、ほとんど歪みません。

なので、この歪みは無視してもOKだと思います。

オーディオの世界では、この歪みも結構気にする人が多いそうですが、

エフェクターはもともと歪ましてますので、埋もれてわからないと思います。

ただ、普通のハイパスフィルターや、

オペアンプの負帰還に挟む位相補償用のコンデンサ等、

明らかに交流電圧が積セラの両端にかかるような場合、

歪みを考慮するなら、セラミックは使わない方がいいです。

フィルムは、セラミックと比べて桁違いに歪まないので、

完全に無視してOKです。

とはいえ、あえてこういうところに積セラを使うことで、

音作りすることもできます。

ここがエフェクターの良いところですね。

全てが味になる(笑)

積セラを使うと一般的には荒い音になるといわれますので、

荒い音が好きなら一度、全部積セラで作ってみても面白いかもしれません。

ただ、個人的には、あんまり積セラで歪ませたくないので、

基本フィルム、小さい値には、シルバーマイカを使います。

まとめ


かなり薄っぺらく、コンデンサの性能の話をしました

僕はというと、初段のカップリングに

Jantzen AudioのCrosscap 0.1uF/400V

後段ののカップリングに

Malloryの150's 1uF/63Vを使うのが好きです。

音がどうこうというよりシャレでやってます。

この二つはサイズがほぼ一緒で、色が白と黒で対照的でおもしろいんです。

予算がそんなにないときは、

全部普通のフィルムコンデンサを使います。

普通っていうのは秋月で売ってる安いやつのことです。

個人的にはメーカーよりもフィルムの種類であったり構造であったりの方が、

サウンドに直接影響するような気がしてます。

ただ一部技術の進歩等で電解なのにフィルムより特性がいいコンデンサとかもあるみたいです。

とはいえそういうの高いと思うので、modするときは、

電解からフィルムにするとか、

ポリエステルからポリプロピレンにするとか種類を変えてみるのをおすすめします。

セラミックをシルバーマイカにするのも大きいかもしれません。

ハイゲインだとセラミックもシルバーマイカも変わんないかもしれませんが。

それでは、皆さんもお気に入りのコンデンサ探してみてください。

ではまた。

デザインにこだわっているというと、これなんかすごいですよね笑
デザインにこだわっているというと、これなんかすごいですよね笑
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